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奥歯の治療も、いつもの注射だけで。負担の少ない新しい麻酔を導入。

下の奥歯は骨が厚く、従来の麻酔では効きにくい場所でした。そのため、これまでは唇や舌まで長時間痺れてしまうような、負担の大きな麻酔(伝達麻酔)が必要なことがありました。

当院で導入している「セプトカイン」は、骨への浸透力が非常に高い新しいタイプの麻酔薬です。これにより、奥歯の治療であっても、狙った場所にピンポイントで効かせることが可能になり、治療後の不快な痺れや身体への負担を軽減できます。

セプトカイン(Septocaine)は、歯科治療で使われるアルチカイン(Articaine)を主成分とする新しいタイプの局所麻酔薬で、日本では2024年後半から2025年にかけて製造販売が承認され、導入が進んでいる医薬品です。従来の麻酔薬(リドカイン系)に比べて効きが速く、効果の持続時間が適切で、肝機能が低下している患者や高齢者にも使いやすい、麻酔が効きにくいと感じる人にも効果が期待できるなどのメリットがあり、歯科治療の選択肢を広げるものとして注目されています。

ご提示いただいた資料(『ジーシー・サークル 194号』掲載のセプトカイン特集記事)に基づき、**「痛みの少ない麻酔」「効きやすさ」「体に優しい」**という観点を中心に、先生がHP等のコンテンツを作成する際の基礎資料となるよう、約2000文字で要約・構成いたしました。


新規導入麻酔薬「セプトカイン(アルチカイン製剤)」詳細

1. 概要:世界標準の麻酔薬がもたらす「新しい選択肢」

これまで日本の歯科医療現場では、リドカイン製剤(オーラ注など)が長らく主流でしたが、世界市場(特にドイツで90%、アメリカで40%のシェア)で実績のある「アルチカイン製剤(商品名:セプトカイン)」が、2025年1月よりジーシー昭和薬品から販売されました 。

本薬剤の最大の特徴は、従来の麻酔薬と比較して「組織浸透性が非常に高い」「作用発現が速い」「体外への排出が速く体に優しい」という点にあり、患者様の負担を軽減する「痛みの少ない治療」を強力にサポートする薬剤です 。

2. 従来品(オーラ注・リドカイン)との決定的な違い

オーラ注(リドカイン)と比較した際の、セプトカイン(アルチカイン)の薬理学的・臨床的な相違点は以下の通りです。

比較項目セプトカイン(アルチカイン)オーラ注(リドカイン)
濃度4%(高濃度で効き目が強い) 2%
組織浸透性非常に高い(骨の中まで染み込む)普通(骨が厚いと効きにくい)
代謝(分解)血中および肝臓(血中で素早く分解)肝臓のみ
半減期約0.5時間(早く抜ける)約1.6時間
適応浸潤麻酔に最適(伝達麻酔は避ける推奨)浸潤・伝達ともに可

3. 臨床的メリット:「痛みの少ない治療」への貢献

① 下顎奥歯でも「注射一本(浸潤麻酔)」で効く(組織浸透性)

歯科治療で最も麻酔が効きにくいとされるのが「下の奥歯(下顎大臼歯)」です。ここは骨(皮質骨)が分厚いため、従来のリドカイン製剤では薬液が骨内部の神経まで到達しにくく、広範囲を痺れさせる「伝達麻酔」が必要なケースが多くありました。

しかし、セプトカインは組織浸透性が非常に高いため、下顎大臼歯であっても、歯ぐきへの通常の注射(浸潤麻酔)だけで、十分な麻酔効果が得られることが実証されています。

  • 患者様へのメリット: 唇や舌が半日痺れ続ける不快な「伝達麻酔」を回避でき、治療後の生活(食事や会話)への支障が少なくなります。

② 効き目が早く、治療待ち時間のストレスを軽減(即効性)

組織への浸透が良いため、作用発現(麻酔が効き始めるまでの時間)が非常に速いのが特徴です 101010

  • 患者様へのメリット: 麻酔をしてから治療開始まで、緊張したまま長く待たされるストレスが軽減されます。また、急性症状(強い痛み)がある場合でも、素早く痛みを抑え込むことが可能です。

③ 作用時間が長く、長時間の治療でも安心(持続性)

タンパク結合率が高く、濃度も4%と高いため、麻酔効果が長時間持続します。

  • 患者様へのメリット: 複数の歯を治療する場合や、インプラント手術などの時間がかかる処置でも、途中で麻酔が切れて痛い思いをするリスクが低減されます。

4. 安全性:「体に優しい」理由(代謝メカニズム)

① 血中で素早く分解される「低毒性」

従来のリドカイン製剤は、体に入った後「肝臓」に運ばれてから分解されるため、分解に時間がかかりました。対してセプトカインは、化学構造中に「エステル結合」を持っており、血液中の酵素(カルボキシエステラーゼ)によって血流の中で速やかに加水分解(約90%)されます 。

そのため、血中半減期(薬の濃度が半分になる時間)は、リドカインの約1.6時間に対し、セプトカインは約0.5時間と非常に短く、体内に薬が蓄積しにくいという特性があります 。

② 高齢者や有病者(肝機能低下)にも安心

肝臓のみでの代謝に依存しないため、肝硬変などの肝機能障害を持つ患者様や、代謝機能が落ちている高齢者の方に対しても、薬物蓄積のリスクが低く、比較的安全に使用することができます 14。

実際の症例として、90歳代の肝硬変患者(肝機能数値に異常あり)の抜歯において、セプトカインを使用し、術中・術後にバイタルサインの異常なく安全に処置を終えた報告があります。

5. 実際の治療での活用事例(エビデンス)

資料内では、以下の症例においてセプトカインの有用性が示されています。

  • 症例1:下顎第一大臼歯の抜髄(神経を取る治療)
    • 状況: 急性炎症があり、かつ骨が厚いため麻酔が効きにくい難症例。
    • 結果: 伝達麻酔を行わず、セプトカインの浸潤麻酔(1本)のみで完全に無痛下での治療に成功。
  • 症例2:インプラント埋入オペ
    • 状況: 侵襲が大きく、長時間の処置が必要。
    • 結果: 作用時間が長いため、安定した麻酔効果を発揮。代謝が早いため、手術時間が延びて追加投与が必要になった際も、過量投与のリスクを抑えて安全に追加が可能 18
  • 症例3:肝硬変患者の抜歯
    • 状況: 肝機能が低下しており、薬の代謝遅延が懸念される。
    • 結果: 血中代謝される特性を活かし、体に負担をかけず安全に抜歯を実施。
  • 症例4:親知らず(水平埋伏智歯)の抜歯
    • 状況: 強い炎症を伴う親知らずの抜歯。通常なら伝達麻酔が必須。
    • 結果: セプトカインの強力な浸透力により、浸潤麻酔のみで痛みなく抜歯を完了。

6. 導入にあたっての注意点と使い分け

セプトカインは非常に優れた薬剤ですが、すべての症例でリドカインに取って代わるものではありません。資料では以下の注意点が挙げられています。

  • 伝達麻酔は避ける: 高濃度(4%)であるため、下顎孔伝達麻酔に使用すると、神経障害(パレステジア)のリスクがわずかながら報告されています 。そのため、伝達麻酔が必要な場合は従来のリドカインを使用し、浸潤麻酔で済む場合はセプトカインを選択するなど、使い分けが推奨されます 。
  • 小児への使用: 海外では4歳以上が適応となっており、4歳未満には他の薬剤を使用する必要があります 。

まとめ

  1. 「痛くない」の根拠: 「骨の中にまで染み込む新しい麻酔」だから、痛みが強い奥歯の治療でも、いつもの注射だけでしっかり効きます。
  2. 「怖くない」の根拠: 麻酔が効くのを待つ間のドキドキする時間が短くて済みます。また、唇まで痺れる不快な麻酔(伝達麻酔)を避けられる可能性が高まります。
  3. 「体に優しい」の根拠: 体の中で素早く分解されてなくなるため、お薬が体に残るのが心配なご年配の方や、お薬に敏感な方でも安心です。