1. 初診相談・カウンセリング
- まずは歯並びやかみ合わせのお悩みを伺います。
- 簡易的な口腔内チェックや矯正治療の概要、費用の説明があります。
- 不安な点や希望についてもここで相談可能です。
2. 精密検査
- より正確な診断のために以下の検査を行います:
- パノラマ・セファロレントゲン撮影・必要に応じてCT撮影
- 歯型(印象採得または口腔内スキャン)
- 顔貌・口腔内写真の撮影
- 顎の大きさ、歯の本数、歯列の幅、かみ合わせなど多角的に評価します。
3. 治療計画の説明
- 精密検査の結果をもとに、治療内容・期間・使用する装置(ワイヤーかマウスピースか)・抜歯の必要性などを説明。
- 費用や支払い方法、注意点も詳しく案内されます。
- 同意のもと、治療をスタートします。
- スペースが不足している場合には、便宜抜歯を行う場合があります。
4. 矯正装置の装着
- 一般的にはワイヤー矯正(マルチブラケット法)を使用。
- 歯の表面にブラケットを接着し、ワイヤーを通して歯に持続的な力を加えます。
- 装着時に痛みはほとんどありませんが、数日は違和感や軽い痛みが出る場合があります。
5. 定期的な調整(1か月ごとが目安)
- 月に1回程度来院し、ワイヤーの交換や調整を行い、歯を段階的に理想的な位置へ移動させていきます。
- 必要に応じてゴムかけ(顎間ゴム)やミニスクリュー(矯正用アンカースクリュー)を使用することもあります。
【矯正ワイヤー交換の一般的な順番(Ni-Ti → ステンレス)】
以下に022(オーツーツー)の場合のワイヤーの交換について。松風のワイヤーは上顎は3本のレーザー線下顎は1つのマーキングとなっている。
- 0.012インチ Ni-Ti(ニッケルチタンワイヤー)
- 治療初期に使用される最も細く柔らかいワイヤー。
- 丸い断面のワイヤーは「丸形(まるがた)」または「ラウンドワイヤー」と呼ばれ、主に治療初期に使用されます。
- 重なりの強い歯や叢生のアライメント(歯の整列)に適しており、弱く持続的な力で歯を少しずつ動かす。
- 痛みも少なく、歯周組織への負担が小さい。
- 歯根膜をゆるめるために使用する
- 0.014インチ Ni-Ti
- 初期のアライメントが進んできた段階で使用。
- わずかに太くなり、もう少し強い力で歯を整列させる。
- 0.016インチ Ni-Ti
- 歯列の不正がある程度改善された中期段階で使用。
- 弾性を保ちつつ、より強い力で歯列を並べていく。
- 0.016(縦)×0.022(奥行)インチ Ni-Ti(レクタンギュラー・矩形ワイヤー)
- 歯の軸方向(トルク)や歯の傾きをコントロールするための矩形ワイヤーに移行。
- 「矩形(くけい)」とは、長方形のことを指します。矯正治療では、ワイヤーの断面形状が「矩形=四角形(長方形や正方形)」であることを意味します。
- スロットにフィットしやすく、3次元的な歯の移動が可能になる。
- 0.017×0.025インチ Ni-Ti
- 引き続きトルクコントロールや細かい調整を進める中〜後期に使用。
- 必要に応じて、この段階でステンレスワイヤーに移行する場合もある。
- 0.019×0.025インチ ステンレススチールワイヤー(SS)
- 矯正終盤に使われる剛性の高いワイヤー。
- 歯列全体の細かな調整・仕上げ・固定に使用。
- ゴムかけ(顎間ゴム)なども併用されることが多い。
✅ ワイヤーのマーキングとは?
矯正用の**プレフォームドアーチワイヤー(既成アーチワイヤー)**には、製造段階で「刻印」や「ライン(マーキング)」が入れられています。
これは、
- 上下(上顎・下顎)
- 表裏(歯列への向き)
- 右左の識別
を一目で判断できるようにするための工夫です。
✅ なぜ上顎=3本、下顎=1本なのか?
顎 | マーキング本数 | 理由 |
---|---|---|
上顎 | 3本線 | より目立つマーキングにして、上顎であることを明確に区別するため。通常、ワイヤーのアーチが広めで湾曲も強いため、識別が必要。 |
下顎 | 1本線 | 下顎ワイヤーは上顎よりもアーチが狭く、形状からもある程度判断できるが、間違いを防ぐための最低限の識別線として1本。 |
✅ 装着ミスを防ぐための工夫
- ワイヤーは左右対称に見えても、実際には左右・上下で微妙な違いがあります。
- 装着を間違えると、意図しない力が加わり、歯の移動に悪影響を及ぼすため、マーキングでの確認は必須です。
- 特にスタッフや複数のドクターで治療を担当する大規模医院では、このマーキングが重要な識別手段となります。
✅ 実際の運用
- ワイヤー中央にある刻印またはマークを見て、「上3本」「下1本」と覚える。
- ワイヤーの袋にも「Upper(上顎用)」「Lower(下顎用)」と印刷されていることが多いが、開封後はマーキングで識別するのが確実。
✅ まとめ
- 上顎ワイヤー:3本線
- 下顎ワイヤー:1本線
これは、誤装着を防ぐための標準的な識別方法です。ワイヤー形状だけでは判別が難しいため、視覚的なマーキングは臨床上非常に重要な役割を果たしています。
6. 治療完了・装置の取り外し
- 歯が整列し、咬合も安定したら装置を取り外します。
- この段階で歯のクリーニングやホワイトニングを行う方もいます。
7. 保定(リテーナー装着)
- 動かした歯は元の位置に戻ろうとするため、保定装置(リテーナー)を使用します。
- 固定式または取り外し式があり、一定期間は毎日装着が必要です。
- 少なくとも1〜2年間は保定が推奨されます。
8. 定期チェック
- 保定期間中も3〜6か月ごとの定期検診を行い、後戻りの有無やかみ合わせを確認します。
【治療期間の目安】
- 矯正期間:1年半〜3年程度
- 保定期間:1年〜2年程度
叢生の矯正治療は、歯を美しく並べるだけでなく、しっかり噛める機能的なかみ合わせを整えることが重要です。信頼できる矯正歯科での早期相談・診断をおすすめします。
シンチバックの必要性
✅ なぜワイヤーが飛び出すのか?
矯正初期、歯列はデコボコしており、ワイヤーは歯の重なりに沿ってたわんでいます。歯がきれいに並んでくると、その**たわみが解消されてワイヤーが“自然に後ろ(遠心側)へスライド”**しようとします。
このとき、ワイヤーの後端がバンドの奥から突き出て、頬や歯肉を傷つけるリスクが出てくるのです。
✅ シンチバックの役割
「シンチバック処理」をしておくことで、
- ワイヤーが遠心(奥)へズレるのを防止
- ワイヤー先端の飛び出しによる頬粘膜の痛みや傷を予防
- ワイヤーが固定されることで歯の意図しない移動も防止
✅ シンチバックをしない場合に起こるリスク
■ 前歯のフレアー(flaring)
- ワイヤーが後方(遠心側)へスライドしていくと、本来後ろに引くべき力が前方に分散してしまい、前歯が前に押し出されるような形で唇側に傾く=フレアーが起こることがあります。
- 特に抜歯症例で前歯を引き込みたい段階では、このフレアーは治療計画にとってマイナスになります。
■ ワイヤーがずれて意図しない歯の動き
- ワイヤーが動いてしまうと、コントロールしていた歯の移動が狂い、治療期間が延びる要因にもなります。
✅ 患者さんが感じる症状と対応例
症状 | 原因 | 対応 |
---|---|---|
頬の内側が痛い | ワイヤーが後ろから飛び出た | シンチバックで再処理/端をカット |
ワイヤーがずれている感覚 | 歯が整列し始めてたわみが消えた | 再調整と再固定が必要 |
✅ まとめ
矯正治療で歯が並び始めたときには、ワイヤーが飛び出す可能性があるため、「シンチバック処理」は安全かつ効率的な治療進行のために欠かせない操作です。
歯科医院側では定期調整時に必ずチェックし、患者さん自身も違和感があれば早めに申し出ることが大切です。