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テトラサイクリン系抗生物質による変色へのホワイトニングの効果について

テトラサイクリン系抗生物質による歯の変色は、一般的な歯の着色汚れ(ステイン)とはメカニズムが異なり、歯科におけるホワイトニングの中でも特に難易度が高いケースとして知られています。

原因となぜ白くするのが難しいのかについて解説します。

1. 変色の原因(メカニズム)

テトラサイクリンによる歯の変色は、歯の表面に汚れが付着したのではなく、歯の内部の構造そのものが変色してしまっているのが特徴です。

  • 対象時期(歯が作られる時期)
    • テトラサイクリン系の抗生物質は、かつて風邪薬のシロップなどにも使われていました。
    • この薬を、母親のお腹の中にいる胎児期から永久歯が生え揃う12歳くらいまでの間(歯の形成期)に多量に服用すると、変色が起こる可能性があります。
    • ※現在は妊婦さんや子供への使用は控えられています。
  • カルシウムとの強力な結合
    • テトラサイクリンは、骨や歯の主成分であるカルシウムと化学的に非常に強く結びつく性質(キレート作用)を持っています。
    • 歯が作られる過程で、血液中に流れてきた薬の成分が、歯のカルシウムと結びついて「テトラサイクリン-カルシウム複合体」という物質になります。これが歯の内部(象牙質)に取り込まれて沈着します。
  • 紫外線による変化
    • 取り込まれた直後は蛍光を帯びた黄色ですが、歯が生えた後、太陽光などの紫外線に当たると酸化反応を起こし、色が濃くなっていきます。
    • これにより、特徴的な黄色、茶褐色、灰色といった、くすんだ暗い色調に変化します。また、服用していた時期に対応して、歯に横縞模様が現れることもあります。

2. なぜ白くすることが難しいのか

一般的なホワイトニング(タバコのヤニや茶渋の除去)と比べて難しい理由は、着色の「場所」と「強さ」にあります。

  • 変色部位が「歯の奥深く」であるため
    • 一般的な着色は歯の表面(エナメル質)の汚れですが、テトラサイクリンは、エナメル質の内側にある「象牙質」の深部そのものが変色しています。
    • ホワイトニング剤は表面から浸透させて作用させるため、奥深くの象牙質まで薬剤を十分に届かせ、反応させるには時間がかかり、限界もあります。
  • 化学結合が非常に強固であるため
    • テトラサイクリンとカルシウムの結合は非常に強力です。
    • ホワイトニングは薬剤(過酸化物)による化学反応で色素を分解・漂白しますが、この強力な結合を分解して色を抜くには、高濃度の薬剤と長期間の作用が必要になります。
  • 色の系統(グレー系)が反応しにくいため
    • ホワイトニングは黄色系・茶色系の変色には比較的効果が高いですが、テトラサイクリン特有のグレー系(灰色や青黒い色調)の変色は、薬剤が反応しにくく、白くなりにくい傾向があります。

まとめと対策

テトラサイクリンによる変色は、歯の成長過程で内部の構造に組み込まれてしまった強力な着色であるため、通常のホワイトニングでは改善が難しいのが現実です。

ただし、全く効果がないわけではありません。

  • 軽度~中等度の場合: 歯科医院で行うオフィスホワイトニングと、自宅で行うホームホワイトニングを併用する「デュアルホワイトニング」を長期間根気強く行うことで、ある程度改善するケースもあります。
  • 重度の場合や縞模様が強い場合: ホワイトニングでの改善には限界があるため、歯の表面を薄く削ってセラミックの板を貼り付ける「ラミネートベニア」や、歯全体を被せる「セラミッククラウン」といった審美治療が選択肢となります。
きらら歯科院長 渡部 和則

▶きらら歯科 院長・歯科医師
▶歯科医師臨床研修指導医
2001年に国立東北大学歯学部を卒業後、大手歯科医療法人にて研鑽を積む。『きらら歯科』開設後は、総勢25名以上の歯科医師を率いる東京最大規模の総合歯科医院へと組織を牽引。 一般歯科から小児・インプラント・矯正歯科に至るまで包括的な診療体制を構築し、XガイドシステムやiTero(口腔内スキャナー)などの最先端デジタル歯科医療技術をいち早く導入。高度な診断と精密な治療を提供している。 また、これまでに50名以上の歯科医師を指導・育成した実績を持ち、臨床研修指導医として次世代の歯科医療を担う人材の輩出にも尽力している。

【所属学会・資格】
日本歯周病学会
日本補綴歯科学会
日本歯内療法学会
日本口腔インプラント学会
インプラント再建歯学研究会

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