e-max(イーマックス)とは
e-max(イーマックス)は、セラミックの中でも審美性が特に優れている素材です。
透明感が高く、天然の歯以上に美しい仕上がりを目指すことができます。
全体をe-maxだけで形づくることも、e-maxでできた土台の表面を通常のセラミックで覆うこともあります。
歯科用プラスチックとガラス(ニケイ酸リチウムガラスセラミック)を主成分にしたセラミックを混ぜ合わせた素材です。

天然歯と近い色調に合わせられ、変色せず、審美性に優れています。強度が高く、奥歯の使用にも向いています。金属アレルギーの心配もありません。

e-maxの強度は通常のセラミックと比較すると3~4倍で、天然歯のエナメル質に近いです。 1,000MPa前後あるジルコニアセラミックには劣りますが、十分な強さを持っています。
e.maxプレスは曲げ強度が400MPaで一般的な陶材の3~4倍あり、審美性にも優れています。
イーマックス(e.max)の組成
イーマックスは、スイスのIvoclar Vivadent社が開発したセラミック材料で、主に以下の2種類があります
e.max Press(加圧成形タイプ)
- 主成分:二ケイ酸リチウム(Lithium disilicate)結晶
- 組成(おおよその重量比):
- 二ケイ酸リチウム結晶:約70%(結晶相)
- SiO₂(二酸化ケイ素)
- Li₂O(酸化リチウム)
- K₂O(酸化カリウム)
- P₂O₅(五酸化リン)
- ZnO(酸化亜鉛)
- Al₂O₃(酸化アルミニウム)
- その他微量元素
この組成により、高い機械的強度(曲げ強度約400MPa)と優れた光学特性(透光性)を持ちます。
e.max CAD(CAD/CAM加工タイプ)
- 加工時は二ケイ酸リチウムの前駆体(リチウムメタケイ酸塩)の状態(青紫色)で供給され、加工後にファーネスで結晶化処理を行い、最終的に二ケイ酸リチウム結晶へと変化。
- 曲げ強度:約360~400MPa
- 結晶化により、CAD加工品でもPressタイプに匹敵する物性が得られる。
特徴・臨床的利点
- 審美性:天然歯に近い色調と透明感、ステイン・グレーズで細かな調整も可能。
- 生体親和性:金属を含まないため、金属アレルギーの心配がない。
- 接着強度:レジンセメントによるエッチング・ボンディング処理により高い接着力が得られる。
- 適応症:前歯・小臼歯・大臼歯のインレー、アンレー、クラウン、ラミネートベニア、短いブリッジ(CADタイプでは特に推奨されないが一部適応あり)
結晶化処理とは?
イーマックスCADは、リチウムメタケイ酸塩(Lithium metasilicate)という比較的柔らかい結晶で構成された「プレクリスタル状態(未結晶化状態)」で工場から出荷されます。この状態では、ミリングマシンで加工しやすい(削りやすい)という利点があります。この削り出したブロックを、専用のファーネス(高温炉)で加熱処理することによって、

🔵 リチウムメタケイ酸塩 → 二ケイ酸リチウム(Lithium disilicate)
へと変化します。これが「結晶化処理(crystallization process)」です。

処理条件(Ivoclar社推奨)
- 温度:約 850℃前後
- 時間:約 25分程度(使用ファーネスにより異なる)
- ファーネス例:Programatシリーズ(Ivoclar) など
結晶化後の変化
項目 | 結晶化前(加工時) | 結晶化後(最終状態) |
---|---|---|
主成分 | リチウムメタケイ酸塩 | 二ケイ酸リチウム |
曲げ強度 | 約130MPa | 約360~400MPa |
硬さ | 柔らかく加工しやすい | 高硬度で耐摩耗性に優れる |
色調 | 青紫色 | 指定されたシェード色へ変化 |
臨床上の注意点
- 結晶化処理中に微小な変形や収縮が生じるため、設計時にそれを考慮したマージン設計が必要。
- 完全な結晶化がなされていない場合、物性が大きく低下する(=強度・耐久性不足)。
つまり、「結晶化処理」は、イーマックスCADに最終的な強度と色調を与える不可欠なステップなんです。
加工のしやすさと最終物性を両立するための「前処理→後焼成」型の材料設計になっているわけですね。
e-maxクラウンの寿命は
セラミック素材の耐用年数は、一般的に5~10年くらいと言われています。

e–maxは強度に優れてはいますが、素材としての寿命は他のセラミックと大きく変わりません。 ただし実際にどれくらい持つのかは、使用状況や設置する位置、歯ぎしりや食いしばりの程度、メンテナンスの有無などにもよります。
e-max治療の流れ
通院回数の目安として、2~3回ほど通っていただくことが多いです。
【1回目】現在の歯の状態を詳しく検査し費用や歯の色などをご相談します

【2回目】歯の形態修正、型取りを行い、仮歯・仮の蓋を装着いたします。
【3回目】噛み合わせの癖など経過も診断した上で、最終的な被せ物・詰め物を装着いたします。
リスク・副作用
詰め物をはめた歯の破折、セラミックの欠けが起こる可能性がありますが、適切なメンテナンス・咬合調整を行えば、ほとんど問題ありません。