顎関節症とは
顎関節症(がくかんせつしょう)は、顎(あご)の関節や周囲の筋肉に痛みや違和感が生じる病気です。口を開けたり噛んだりすると顎が痛む、口が開きにくい、カクカク音がする(クリック音)などの症状が特徴です。顎関節症は歯科の専門用語でTMD(ティエムディ)と言います。TMDとは顎関節Temporomandibular joint(Temporo=側頭部(Temporal bone=側頭骨) mandibular=下顎骨 joint=関節)部のdisorder=調子が悪いという略です。

顎が口を開けた時にカクカク・ゴリゴリ音がする、口が大きく開かない、顎が痛むなどの症状は顎関節症の主な症状ですのでもしこのような症状がありましたら一度ご相談ください。軽い症状なら自然に改善することもありますが、放置すると悪化しやすくなります。
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顎関節症の主な症状
- 口を開閉する際の痛み(こめかみ・耳の前・頬周辺)
- 口が大きく開かない(開口障害)
- 顎を動かすとカクカク、ゴリゴリと音がする
- 噛み合わせの違和感
- 頭痛や肩こり、耳鳴りを伴うことも

顎関節症の原因
顎関節症は 複数の要因が重なって発症 すると考えられています。主な原因には以下のようなものがあります。
- 歯ぎしり・食いしばり
- 睡眠中の歯ぎしりは、上下の顎に強い力が繰り返しかかり、顎関節や筋肉に過剰な負担を与えるため、顎関節症の原因となります。

- ストレス・緊張
- ストレスが溜まると無意識に歯を食いしばったり、睡眠中の歯ぎしりが増え、顎の筋肉や関節に負担をかけます。その結果、顎関節に炎症や痛みが生じ、顎関節症の原因になります。ストレス管理は顎関節症予防に重要です。

- 姿勢の悪さ
- 猫背や頬杖をつく習慣があると顎に負担がかかる。
- 外傷(事故やスポーツなど)
- 顎に強い衝撃を受けると関節や筋肉にダメージが残る。
顎関節症の割合
顎関節症の割合について、一般的に日本では約2人に1人が顎関節症を経験するとされています 。特に20代前半の女性で多く見られ、その後、中高年になると再び増加する傾向があります。
コロナ禍の影響でマスクの着用やスマートフォンの使用増加が、顎関節症の発症に影響を与えているとの報告もあります。これらの要因により、顎関節に負担がかかりやすくなり、顎関節症の症状が現れやすくなるとされています 。

顎関節症は、噛み合わせの問題やストレス、日常の悪習慣(歯ぎしり、食いしばり、頬杖など)によって引き起こされることが多いです 。症状には、顎の痛みや口を開けたときの音、顎の動きに伴う不快感などがあります。
治療や予防には、適切なセルフケア(顎のマッサージや口を大きく開ける運動)や、歯科医師による治療(スプリントの使用など)が推奨されています。また、日常生活での習慣改善も重要です 。

顎関節症の分類
顎関節症(TMD: Temporomandibular Disorders)は、顎関節や咀嚼筋の機能障害を伴う疾患であり、障害される部位によって一般的に以下のように分類されます。
1. 咀嚼筋障害(筋痛型)
筋性の問題が原因で、顎関節症の中でも最も一般的なタイプ。
特徴
- 咀嚼筋(咬筋、側頭筋など)の痛み
- 開口時や咀嚼時の筋肉痛
- 食いしばりや歯ぎしり(ブラキシズム)が関与
- ストレスや姿勢の影響を受けやすい
2. 顎関節痛障害(関節痛型)
顎関節自体の炎症による痛みが特徴。
特徴
- 顎関節部の圧痛や動作時の痛み
- 開閉口時に痛みが悪化
- 関節包や靭帯の炎症が関与
- 顎関節炎(capsulitis、synovitis)が関連
3. 顎関節円板障害(クリック・ロック型)
関節円板のずれや変位が関与するタイプ。
特徴
- 開閉口時のクリック音(カクンという音)
- 関節円板の前方転位(復位あり or なし)
- 口が開きにくくなる(ロック)
- 「復位を伴う円板転位」「復位を伴わない円板転位」に分類
4. 顎関節変形性関節症(骨の変性型)
顎関節の軟骨や骨の変性が進行したもの。
特徴
- 顎関節の摩耗や変形(骨棘形成、関節裂隙狭小化)
- ゴリゴリした音(クレピタス)
- 高齢者や長期的な咬合異常のある人に多い
5. その他の顎関節疾患
顎関節症以外の疾患が関連している場合。
例
- 外傷性顎関節症(外傷による関節損傷)
- 感染性関節炎(細菌感染による炎症)
- 腫瘍(顎関節周囲の腫瘍)
この分類は、アメリカ国立歯科頭蓋顔面研究所(NIDCR)の分類や、RDC/TMD(Research Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders)などの診断基準に基づいています。
顎関節症治療|あきる野市きらら歯科
症状の程度によって治療方法が異なります。
保存療法(軽度〜中等度の症状)
セルフケア(生活習慣の見直し)
無意識の食いしばりをやめる
柔らかい食事を心がける
大きく口を開けすぎない
スプリント療法(マウスピース)
ナイトガード(就寝時に装着)を使用し、顎への負担を軽減

顎関節症の治療では、まず非侵襲的(歯を削らない・外科的でない)な方法を優先するのが原則 です。その中でスプリント療法(マウスピース治療)は、顎関節や咬筋にかかる負担を軽減し、症状を改善する効果が高い ため、第一選択とされています。
歯科的治療(中等度以上の症状)
- 噛み合わせの調整
- 噛み合わせのズレを改善するため、詰め物や被せ物を調整
- 矯正治療
- 長期的に噛み合わせを改善するための歯列矯正
顎関節症の治療法として、「矯正治療」や「咬合調整(歯を削って噛み合わせを変える)」が提案されることがありますが、これらの治療は顎関節症の根本的な解決にならない可能性が高いため、慎重に検討する必要があります。きらら歯科ではあまり薦めていません。
薬物療法(痛みが強い場合)
顎関節症の薬物治療には、痛みや炎症を抑える非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)や筋緊張を緩和する筋弛緩薬が主に用いられます。加えて、症状が重い場合には抗うつ薬や神経障害性疼痛薬なども処方されることがあり、痛みのコントロールとともに精神的負担の軽減を図ることもあります。

外科治療(重症の場合)

関節腔洗浄療法(顎関節の中を洗浄して炎症を軽減)
関節腔洗浄療法とは、顎関節症の治療法の一つで、顎関節内に生じた炎症物質や不要な成分を生理食塩水などで洗い流し、症状を改善する方法です。局所麻酔下で関節腔内に針を挿入し、洗浄液を注入・排出することで、関節円板の動きを滑らかにし、痛みや開口障害の軽減を図ります。軽度~中等度の顎関節症に有効とされ、手術を避けたい場合の治療選択肢となります。
関節鏡視下手術(関節内の異常を手術で改善)
関節鏡視下手術とは、顎関節症の治療法の一つで、小さな切開から関節鏡を挿入し、関節内部を直接観察しながら治療を行う方法です。癒着の剥離や関節円板の整復 などを低侵襲で実施でき、従来の開放手術に比べて回復が早いのが特徴です。
関節形成術(重度の場合、関節の形を整える手術)
関節形成術とは、顎関節症や関節の変形・機能障害を改善するために行う外科手術の一つです。主に関節円板の変形や癒着、骨の変形が原因で口の開閉が困難になった場合に適応されます。手術では、関節円板の修復や位置の調整、骨の再形成を行い、関節の動きを改善します。症状が重く、薬物療法や関節鏡視下手術での改善が見られない場合に選択されることが多く、術後のリハビリが重要となります。
顎関節症の治癒率
顎関節症の治癒率は、症状の種類や原因、治療法、患者の生活習慣によって異なります。
1. 自然治癒の割合
- 軽度の顎関節症は 約50〜70% の患者が特別な治療をしなくても自然に改善すると報告されています。
- 一時的なストレスや姿勢の影響による咀嚼筋の痛み(筋痛型)は、数週間〜数ヶ月 で症状が軽減することが多いです。
2. 保存療法での改善率
保存療法(スプリント療法、理学療法、薬物療法、行動療法など)を受けた患者の 約80〜90% が症状の改善を実感するとされています。
- スプリント療法(マウスピース使用):約 60〜80% の患者で症状の軽減が見られる。
- 理学療法(マッサージやストレッチ):約 70〜80% の患者が痛みの軽減を実感。
- 行動療法(ストレス管理や悪習癖の改善):長期的な効果が期待できる。
3. 手術が必要な割合
- 手術が必要になるケースは 全体の5%以下 とされており、ほとんどの患者は保存療法で改善します。
- 関節円板転位(復位なし) や 重度の変形性関節症 の場合は、手術が考慮されることがあります。
4. 長期予後と再発率
- 一度改善しても、生活習慣(食いしばり、歯ぎしり、ストレスなど)が原因で 約30〜40% の患者が再発する可能性があります。
結論
- 軽度の顎関節症 → 半数以上が自然に改善
- 保存療法 → 80〜90%が改善
- 手術が必要なケース → 5%以下
- 再発率 → 30〜40%(生活習慣次第)
顎関節症の予防方法
顎関節症を防ぐためには、日常の習慣を見直すことが大切です。まず、食いしばりや歯ぎしりを防ぐために、リラックスを心がけ、ストレスを溜め込まないことが重要です。特に就寝時の歯ぎしりがある場合は、ナイトガード(マウスピース)の使用が有効です。
また、硬いものを避け、片側だけで噛まないようにし、左右バランスよく使うことが大切です。長時間のうつ伏せ寝や頬杖も顎に負担をかけるため控えましょう。さらに、姿勢を正しく保つことで顎関節への負担を減らせます。
症状が軽いうちに口の開閉運動やストレッチを行い、顎の筋肉を柔らかく保つことも効果的です。違和感が続く場合は、早めに歯科医院で相談しましょう。
