顎間ゴムの「長さ」について
長さの定義と単位
矯正用顎間ゴムの「長さ」は、未伸展時(非使用時)の内径(ルーメン径)で表され、一般的には1/8インチ、3/16インチ、1/4インチ、5/16インチ、3/8インチなどの表記で分類されます(1インチ=25.4mm)。
サイズ(inch) | ミリ換算(約) | 使用例 |
---|---|---|
1/8 inch | 約3.2mm | 前歯部や軽い牽引 |
3/16 inch | 約4.8mm | 前歯~犬歯間など |
1/4 inch | 約6.4mm | 臼歯を含む広い範囲 |
5/16 inch | 約7.9mm | 大きな牽引力が必要な場合 |
3/8 inch | 約9.5mm | 顎位誘導・咬合高調整など |
長さと牽引力の関係
ゴムの長さは、使用時の伸展距離に応じて適切なサイズが選定されます。短すぎるゴムを広範囲に使用すると過度の牽引力が加わり痛みや装置の破損リスクが高まります。逆に長すぎると必要な牽引力が得られません。また、ゴムの強さ(light、medium、heavyなど)はoz(オンス)で表示されることが多く、これも距離との関係で決まります。
矯正用ゴムでの「1オンス(1 oz)」は、約28.35グラム重(g)に相当します。これは「ゴムが一定距離伸ばされたときに何gの力で引っ張っているか」を表しています。たとえば、4 ozのゴムであれば約113gの牽引力があるということになります。牽引力が強いほど歯の移動スピードが速くなる反面、疼痛・歯根吸収・装置の破損リスクが増大するため、慎重な選択が必要です。
- オンス表示の具体例と意味
- 2 oz(ライト) 約56 g 軽い牽引、微調整や前歯部の矯正に使用
- 4 oz(ミディアム) 約113 g 標準的な牽引、クラスII・IIIゴムに広く使用
- 6 oz(ヘビー) 約170 g 強い牽引が必要な症例(大きな咬合改善など)
- 8 oz(エクストラヘビー) 約227 g かなり強力な牽引、短期間の顎位誘導などで使用
- 臨床現場での使い分けの考え方
- 初期段階:Light(2~4 oz)で適応と反応を確認
- 中間~終盤:Medium~Heavy(4~6 oz)で確実な咬合誘導
- 短期間での積極的補正(必要時):Heavy以上(6~8 oz)
最も一般的に使用される顎間ゴムのサイズと強さ
分類 | 規格 | 用途例 |
---|---|---|
サイズ | 1/4インチ(約6.4mm) | クラスII・クラスIIIゴム、垂直ゴムなど多目的 |
強さ(テンション) | Medium(中程度) 約4.5~6.0 oz | 適度な力で多くの咬合調整に対応可能 |
■ 理由と臨床的根拠
● なぜ「1/4インチ Medium」がよく使われるのか?
- 適度な牽引距離と力のバランスが取れており、上顎犬歯~下顎第一大臼歯などの**代表的な顎間距離(約20〜30mm)**にマッチ。
- 小さすぎず大きすぎず、ほとんどの咬合状態に対応できる汎用性がある。
- 患者への装着感も比較的快適で、継続装着がしやすい。
- クラスII・IIIゴムにも、垂直ゴムにも使えるため、一本化できるケースが多い。
顎間ゴムを使う「部位と目的」
1. クラスI ゴム(近心移動目的)
- 使用位置:下顎第一大臼歯〜上顎犬歯
- 目的:下顎大臼歯の近心移動による咬合の緊密化
- 例:前歯部空隙閉鎖後の咬合安定化
2. クラスII ゴム(上顎前突・出っ歯の補正)
- 使用位置:上顎犬歯〜下顎第一大臼歯
- 目的:上顎の遠心移動、下顎の近心移動を促進
- 典型症例:上顎前突症例(Angle Class II)
3. クラスIII ゴム(下顎前突・反対咬合の補正)
- 使用位置:下顎犬歯〜上顎第一大臼歯
- 目的:下顎の遠心移動、上顎の近心移動
- 典型症例:下顎前突症例(Angle Class III)
4. 垂直ゴム(オープンバイトや深い咬合の調整)
- 使用位置:同名歯同士(上顎犬歯~下顎犬歯など)
- 目的:咬合平面の垂直的な閉鎖(開咬補正や咬合の沈下)
- 注意点:使いすぎると咬合過高・咬合干渉の原因に
5. 交叉ゴム(クロスバイト補正)
- 使用位置:上顎頬側~下顎舌側、またはその逆
- 目的:上下顎歯列の左右的交叉(クロスバイト)の補正
- 対象:臼歯部や前歯部の咬合干渉を伴うケース
6. 顎位誘導ゴム(顎偏位や顎位ズレの修正)
- 使用位置:個々の症例に合わせて非対称配置
- 目的:左右の顎の偏位を是正し正中を一致させる
- 例:機能的偏位・側方偏位の補正
使用時の注意点と管理
- 着脱のタイミング:食事・歯磨き時に外し、それ以外は常時装着が原則(約20時間/日以上)。
- 定期的交換が必須:ゴムは時間と共に伸びて劣化するため、1日2〜3回交換が推奨されます。食事のたびに交換
- 患者教育の重要性:ゴムの装着指導が不十分だと、治療効果が得られず治療期間が延びる。
まとめ
顎間ゴムは、歯の移動だけでなく、咬合誘導・顎位調整など多岐にわたる役割を担う、矯正治療における微調整の要です。その効果を最大限に発揮させるためには、適切な長さの選定・力の強さ・使用時間の遵守・部位の正確な指定が極めて重要です。
矯正歯科治療に使用するゴムの強さの分類
エラスティックスとは、上下の装置にかける小さな輪ゴムのことです。上下のかみ合わせをつくったり、上下左右の歯の位置をアジャストにする為に矯正歯科の治療上、必要不可欠なものです。

ゴムをかけはじめて、5時間ほどしてから歯が動きはじめますので1日5~6時間の使用では効果がありません。患者さま自身の協力が必要ですのでしっかりと使用してください。ゴムをなくした時、足りなくなってしまった時、かける装置が取れてしまった時などは必ずご連絡下さい。