ダイアグノデント(DIAGNOdent)は、ドイツのKaVo社が開発した歯科用の虫歯検出装置です。レーザー光を用いて虫歯を高精度で診断し、歯を傷つけずに虫歯の進行度を数値化することで、正確な診断・治療計画の立案を可能にしています。
ダイアグノデントの仕組み
ダイアグノデントは歯の表面に弱いレーザー光(波長655nmの赤色レーザー)を当て、歯の内部の状態を調べます。虫歯菌が出す代謝産物や、歯が脱灰(虫歯になる初期段階)した部分にレーザー光が反応すると、蛍光を発します。この蛍光を専用のセンサーがキャッチし、数値として表示します。
この数値(0~99)が高いほど虫歯のリスクが高いことを示し、治療が必要な状態か、経過観察でよいかを判断します。
従来の虫歯診断との違い
従来、歯科医師は肉眼やレントゲン写真、探針(プローブ)を用いて虫歯を診断してきました。しかしこれらの方法では、
- ごく初期の虫歯(エナメル質がわずかに溶け始めた段階)の発見が難しい
- レントゲンでは歯の溝や隣接面の初期虫歯が映りにくい
- 探針では歯に傷をつけてしまう可能性がある
などの問題がありました。
ダイアグノデントでは、歯に全く傷をつけずに、初期の虫歯も高精度で検知できるため、歯を削ることなく、早期の予防治療が可能になります。
ダイアグノデントの利点
① 痛みがなく安全な診査
ダイアグノデントは歯の表面に軽くレーザーを照射するだけで、全く痛みや刺激がありません。そのため、小児や歯科治療が苦手な患者様でも安心して受けられます。
② 初期虫歯の早期発見
エナメル質のわずかな脱灰から検知できるため、初期虫歯の段階で発見し、早期に対応できます。早期治療は虫歯の進行を抑え、歯の寿命を伸ばすことにつながります。
③ 虫歯の進行度を客観的に評価可能
ダイアグノデントでは虫歯の状態を数値化できるため、主観的な診断を排除し、患者様にも分かりやすく状態を伝えられます。
④ 過剰治療の防止
虫歯の正確な進行度が分かることで、不必要に歯を削ることなく、経過観察や予防処置を適切に選択できます。
ダイアグノデントの数値の目安
一般的な数値の目安は以下の通りです。
- 0~12
健康な歯・虫歯なし
(経過観察または予防処置のみ) - 13~24
初期虫歯(エナメル質表層の脱灰)
(予防処置やフッ素塗布、経過観察) - 25~35
進行が始まった虫歯(エナメル質内部まで脱灰)
(予防処置を継続し、場合によっては削って修復処置) - 36以上
明らかな虫歯(象牙質まで虫歯が進行)
(治療が必要で、基本的に削って修復処置)
これらの数値を参考に歯科医師が適切な治療方針を決定します。
ダイアグノデントの注意点と限界
ダイアグノデントは非常に優れた診断機器ですが、以下のような注意点や限界も存在します。
- 歯石や着色がある場合、正確な診断が難しい場合がある
測定前に専門的なクリーニングを行い、歯石や着色を除去しておく必要があります。 - 詰め物の周囲など、金属やレジンなどの充填物周辺は誤差が生じやすい
特に銀歯やコンポジットレジンの周囲では数値が正確に出ないことがあります。 - 数値だけに頼らず、他の診断方法と併用して総合的に診断する必要がある
レントゲンや視診・触診との併用により、より正確な診断が可能になります。
まとめ
ダイアグノデントは、痛みや侵襲を伴わずに虫歯を早期に発見できる革新的な診断機器です。虫歯治療を最小限に抑え、歯を可能な限り削らない治療が可能となり、予防中心の歯科診療を実現します。患者様にとっても歯科医師にとっても、安心で信頼性の高い診断ツールと言えるでしょう。