顎変形症手術の種類
顎変形症の手術には、様々な種類があります。代表的なものとして、以下のものが挙げられます。
- Le FortⅠ骨切り術: 上顎骨を水平に切断し、移動させる手術です。
- Le Fort Ⅱ骨切り術: 上顎骨を中顔面に沿って切断し、移動させる手術です。
- Le Fort Ⅲ骨切り術: 上顎骨と鼻骨を切断し、顔面全体を移動させる手術です。
- 下顎枝矢状分割術(SSRO): 下顎骨を矢状方向に分割し、移動させる手術です。
下顎枝矢状分割術について
当院では、外科手術を伴う矯正歯科治療に関しては、大学病院をご紹介させていただいております。
下顎枝矢状分割術とは?
下顎枝矢状分割術(Sagital Split Ramus Osteotomy、SSRO)は、顎の骨の形状を変えることで、顎変形症を治療する外科手術の一つです。特に、受け口(下顎前突症)や顎が後ろに下がっている状態(下顎後退症)といったケースでよく行われます。
この手術では、下顎の骨を矢状方向(前後方向)に分割し、その骨を移動させることで、理想的な顎の位置に修正します。
なぜ下顎枝矢状分割術が必要になるのか?
- 受け口(下顎前突症): 下顎が前に突き出ている状態。
- 下顎後退症: 下顎が後ろに引っ込んでいる状態。
- 開咬: 前歯が噛み合わず、隙間が空いている状態。
- 顎の左右差: 顎が左右で非対称な状態。
これらの状態は、単に見た目の問題だけでなく、咀嚼機能や発音、さらには心理的な影響も与える可能性があります。
手術の流れ
- 術前検査: CTスキャンや口腔内検査などを行い、手術計画を立てます。
- 手術: 局所麻酔または全身麻酔下で行われます。下顎の骨を分割し、計画した位置に移動させ、固定します。
- 術後: 腫れや痛みを伴うことがありますが、通常は数週間で回復します。
手術のメリット
- 効果が高い: 骨を直接移動させるため、歯の移動だけでは難しい大きな変化を得られます。
- 安定した結果: 骨が癒合することで、安定した治療効果が期待できます。
- 機能の改善: 咀嚼機能や発音機能が改善され、生活の質が向上します。
- 見た目の改善: 顎のバランスが整い、顔全体の印象が大きく変わります。
手術のデメリット
- 手術に伴うリスク: 出血、感染、神経障害などのリスクがあります。
- 回復期間: 手術後、腫れや痛み、食事制限など、一定期間の回復期間が必要です。
- 高額な費用: 健康保険の適用範囲は限られているため、高額な費用がかかる場合があります。
手術の適応
- 受け口(下顎前突症)
- 下顎後退症
- 開咬
- 顎の左右差
- 顎の変形を伴う顎関節症
まとめ
下顎枝矢状分割術は、顎の骨格的な問題を改善し、より美しい顔貌と機能的な口腔を得るための有効な治療法です。しかし、手術にはリスクも伴うため、慎重に検討する必要があります。
もし、顎の変形でお悩みでしたら、一度歯科口腔外科にご相談ください。
下顎枝矢状分割術の術後について
下顎枝矢状分割術は、顎の骨を移動させる大きな手術であるため、術後はある程度の回復期間が必要です。術後の経過は個人差がありますが、一般的には以下の様な経過をたどります。
術後直後から1週間程度
- 腫れ: 手術部位を中心に、顔全体が腫れてきます。
- 痛み: 手術部位に痛みを感じます。痛み止めを服用することで緩和されます。
- 内出血: 顎や首に内出血が生じ、アザができます。
- 開口制限: 口を開けるのが困難になります。
- 食事: 液体食や柔らかい食事が中心になります。
術後1週間~1ヶ月
- 腫れが引く: 徐々に腫れが引いてきますが、完全に消えるまでには数ヶ月かかることがあります。
- 痛みも軽減: 痛みも徐々に軽減していきます。
- 開口量が回復: 口が開けられる範囲が広がっていきます。
- 食事: 軟食から徐々に固形食へと移行していきます。
術後1ヶ月~
- 腫れがほとんどなくなる: 腫れがほぼ消え、顔の輪郭がはっきりしてきます。
- 痛みもほとんどなくなる: 痛みはほとんど感じなくなります。
- 通常の生活へ: 日常生活を送れるようになります。
術後の注意点
- 安静: 手術後は安静にし、無理な運動は避けましょう。
- 口腔ケア: 口腔内の清潔を保つために、指示された口腔ケアをしっかりと行いましょう。
- 食事: 軟食から徐々に固形食へと移行しますが、硬いものや熱すぎるものは避けましょう。
- 定期的な通院: 定期的に歯科医院を受診し、医師の指示に従いましょう。
長期的な経過
- 感覚異常: 手術により、唇やあごに痺れや感覚の鈍さを感じる場合があります。
- **後戻り:**まれに、骨が元の位置に戻ろうとする後戻りが起こることがあります。
- 顎関節症: 顎関節に痛みや違和感を感じる場合があります。
まとめ
下顎枝矢状分割術は、大きな手術であるため、術後の回復には時間がかかります。しかし、適切な治療とケアを行うことで、良好な結果が期待できます。