歯ぎしりについて
「歯ぎしりをしていますか?」と歯科医院でお聞きするとほとんどの方から「私は歯ぎしりはしていません」と言われます。しかし実は歯を診ることにより歯ぎしりの習慣があるのかないのか歯科医師はすぐにわかります。歯ぎしりを自覚している人は実はとても少ないのです。
性別による有病率の大きな差はないといわれています。ただし、女性の方が食いしばりによる首や肩のこり、頭痛を訴える割合がやや高く、また男性は歯のすり減りや破折のリスクが高い傾向があります。

歯ぎしり(専門用語でブラキシズム)
ブラキシズム(bruxism)とは、歯ぎしりや食いしばりなど、無意識に上下の歯を強く噛みしめたり、こすり合わせたりする癖や習慣のことです。
ブラキシズムの主なタイプには以下の2つがあります。
①睡眠時ブラキシズム(夜間の歯ぎしり)
- 寝ている間に無意識に歯をギリギリと擦り合わせたり、強く噛み締めたりします。
- 自覚症状がないため、本人は気づきにくく、家族など周囲に指摘されて初めて気づくことが多いです。
②覚醒時ブラキシズム(昼間の食いしばり)
- 日中、集中しているときやストレスを感じているときに無意識に歯を強く噛みしめてしまいます。
- 本人が自覚していることもありますが、多くは習慣化しているため気づかないことがあります。
歯ぎしりをしている人の割合
- 全体の有病率
- 日本人の約30~40%の人が何らかの歯ぎしりをしていると推定される。
- ただし、自覚している人は約10~15%にとどまり、多くの人が無自覚に歯ぎしりをしている。
- 日中の食いしばり(覚醒時ブラキシズム)は約20~30%。
年齢層別の歯ぎしりの割合
- 子ども(小児):約15~20%
- 一般的に成長とともに自然に減少するが、ストレスや習慣で持続する場合もある。
- 成人(20~50代):約10~15%(睡眠時)、20~30%(日中)
- 特にストレスの影響を受けやすい20~40代では食いしばりの割合が高い。
- 高齢者(60代以上):約2~5%
- 加齢とともに咬筋の活動が低下し、歯ぎしりの頻度が減少する。
歯ぎしりの原因
ストレス
歯ぎしりが起こる最も大きな原因といわれているのは、ストレスです。日々の疲れなどが溜まると、そのストレスを解消しようと歯ぎしりを起こします。特に、ストレス発散として、睡眠中に無意識に行っていることが多いです。

歯並びやかみ合わせの変化
かみ合わせは、成長や老化、歯科医院での治療、歯周病などの病気などによって、常に変化するものです。
かみ合わせの自然的な変化自体は、身体にとって必要なことですから、心配する必要はないのですが、虫歯を治療せず放っておいて歯が欠けてしまったり、歯周病で歯の位置がずれてきたりすると、歯ぎしりが強くなってしまいます。
顎の変化
成長とともに顎関節がすり減り、あごのかたちは変化していきます。歯の形もそれに合わせて変えなければならないため、歯を削ろうと歯ぎしりを起こします。
歯ぎしりの起こすトラブル
歯科におけるグラインディングとは、主に睡眠中の歯ぎしり(ブラキシズム)を指します。放置すると歯の磨耗や顎関節症を引き起こす可能性があり、マウスピースを用いた治療や、ストレス軽減などの根本的な原因への対処が行われます。

歯科におけるクレンチングとは、無意識に歯を強く噛みしめる行為を指します。ストレスなどが原因で起こり、歯や顎関節への負担、頭痛や肩こりを引き起こすことも。治療法としては、マウスピースの装着やストレス管理などがあります。

歯ぎしりをすると良くない理由は、歯やあごに相当強い力が加わってしまうことにあります。
歯が割れてしまうことがあります


歯に強い力が加わることにより、歯自体が削れてしまったり、歯が割れてしまうこともあります。他にも、治療済の歯の被せものが壊れる、あごの負担がおおきいため、顎関節症が悪化するなども考えられます。
さらに、歯やあご以外にも、強い力を加えることで筋肉が緊張し、頭痛や肩こり、目の奥の痛みを引き起こす原因にもなるのです。
睡眠時ブラキシズムと覚醒時ブラキシズムの違い
- 睡眠時ブラキシズム(寝ている間の歯ぎしり)
- 無意識に起こるため自覚が少ない。
- 咬合力(噛む力)が非常に強く、歯や顎への影響が大きい。
- 睡眠の質を低下させることもある。
- 覚醒時ブラキシズム(起きている間の食いしばり)
- ストレスや集中時に無意識に発生する。
- 睡眠時よりも力は弱いが、長時間続くことで顎関節症や筋肉疲労を引き起こす。
歯科医院での診察・ナイトガード(マウスピース)治療
歯ぎしりから歯を守るために作るものがマウスピースです。
マウスピースに期待する機能は歯を守ることと歯ぎしり・くいしばりの行為そのものを減らしてくれる事です。
マウスピースの大きさ・硬さ・厚み等の設計を調整する事により、歯ぎしり・くいしばりが減ることを目指して作っています。

マウスピースを装着して睡眠中、噛みかけてはすぐに止め・噛みかけてはすぐに止めを繰り返す様に出来ると筋肉の疲労とコリは少なくなります。その結果血流が改善して肩こり・片頭痛が改善し、自律神経も安定します。
歯ぎしりへの対策
歯ぎしりを減らすには、原因を特定し、それに応じた対策を行うことが重要です。
1. 歯科医院での相談と治療
- マウスピース(ナイトガード)の装着: 歯科医院で自分専用のマウスピースを作成してもらい、就寝時に装着することで、歯への負担を軽減できます。
- 噛み合わせの調整: 噛み合わせの悪さが原因で歯ぎしりをしている場合は、歯科矯正や詰め物・被せ物の調整などで改善できることがあります。

2. 生活習慣の見直し
- ストレスの軽減: ストレスは歯ぎしりの大きな原因の一つです。リラックスできる時間を作り、ストレスを解消しましょう。
- 入浴
- ストレッチ
- アロマテラピー
- 趣味に没頭する
- 睡眠環境の改善: 質の高い睡眠は、歯ぎしりの軽減につながります。
- 寝室を暗く静かにする
- 寝る前にカフェインやアルコールを控える
- 適度な運動を取り入れる
- 寝る前のリラックス: 寝る前にリラックスできる時間を作りましょう。
- 温かいお風呂に入る
- ストレッチやヨガを行う
- 読書や音楽鑑賞をする
- アルコール、カフェイン、喫煙を控える: これらの刺激物は、睡眠の質を低下させ、歯ぎしりを悪化させる可能性があります。
- 寝る前のスマホやPCを控える: スマホやPCの画面から発せられるブルーライトは、睡眠の質を低下させる可能性があります。
3. その他
- 顎周りのマッサージ: 顎周りの筋肉の緊張をほぐすことで、歯ぎしりを軽減できることがあります。
- ボトックス注射: 筋肉の緊張を緩和するボトックス注射が有効な場合もあります。